瀬戸内海負子図 (2024)
香川県に来て真っ先に訪れた瀬戸内海歴史民俗資料館には、たくさんの民具が展示されていた。その中でもとりわけ印象に残ったものがある。負子、または背負子と呼ばれるものである。
その手製の木製運搬具を使い、地域の資源をめいっぱい背負う当時の人々の姿からは、人と土地との結びつきが強く感じられた。
「ひと⇄うみ」という非常に広大で、ともすれば掴みどころのないテーマに対して、「背負う」という記号を用いることで、時代を超え、今の「ひと⇄うみ」の関係を捉えることができるのではないかと考えた。
そこで、自チームでは海に関わりのある人たちにインタビューをして、彼らと彼ら自身に関係する物事を背負ったポートレートを描くことにした。
リサーチ・企画編では、メンバーにインタビュアーを務めてもらい、ポートレートの草案を描いてもらった。制作編ではリサーチ編を振り返り、表現の改良点を話し合った。そして、その内容をもとに草案の良さをすくい上げながら、新居が作品を描き起こしていった。
また、メンバーにはそれと並行して、この土地に暮らす人として自身のポートレートを制作してもらった。
全編を通して、海に関係するもの、あまり関係がなさそうなもの、知らなかったこと、共感できることなど、さまざまな物事が浮かび上がってきた。一見バラバラに見えるモチーフも、そこには確かなつながりがある。
ずっと先の人々はこの負子の積み荷に何を感じるのだろうか。そして、彼らは何を負子に乗せるのだろうか。あの日見た負子から今を見渡し、未来に思いを馳せていた。

海は人を愛する「ひと⇄うみ」展
令和6年10月5日(土)~11月10日(日)
会場:香川大学 芸術未来研究場せとうち

W1500×H2100mm  
インクジェットプリント / ターポリン
原画 / 鉛筆・紙

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